遡ること9年前、湘南の教会に家具を作った話
教会の家具製作
もう9年も前の話ですが、湘南にある教会の家具をつくる機会を頂きました。2015年のこと、独立して10年目のお話。設計事務所の方からメールでの問い合わせが事のはじまり。すでに微かな記憶。個人の工房によく声をかけてくれたなと。結構なボリュームのある話を。ありがたいことです。
まず教会の家具といわれて、ぱっとイメージできるのは並べられたベンチぐらい。他に必要な家具って?という浅識具合。あとはまとまった台数の制作に納期対応できるのか。10年目に大きな仕事が舞い込んできて、不安と期待が入り混じった感情に落ち着きませんでした。
制作するものは、ベンチ14台と講壇と聖餐台の計16個。ベンチの他は牧師さんが説教される時に使う講壇に、聖餐式に使う台。聖餐式、自分には馴染みがないので詳しくは分かりませんが、儀式のひとつのようです。という16台を一人でつくるとなると、制作期間は50~60日間ぐらい。納期までのカレンダーを作って、大まかな工程を埋めつつ気分を落ち着かせて制作に取り掛かります。
幅2350ミリと大きなサイズがハードワーク
制作樹種はホワイトアッシュ。色合いが白く淡い感じで木目もはっきりしていてタモほど癖がないので教会の雰囲気に良かったと思います。比較的安価に仕入れる事ができる点も選んだ理由の一つ。アッシュは偽心といって本来の心材とは違った色の濃い部分が入ったりすることもあるのですが、表に出さないように木取りを良く考えたとはいえ、比較的綺麗なアッシュが手に入った事が画像をみてわかります。
ベンチの幅が大人3人ゆったり、つめれば4人しっかり座れる幅2350ミリ。背もたれ・座面、それに聖書がおける台を幅いっぱい1枚で継ぎ目なく取りたかったので、反りや節などを見極めて木を選定する木取りという作業にとても気を使いました。それも本数が多く、長さもあって振り回すのに体力的にハードワークでした。この木取りという作業が大仕事。これさえ決まればあとはせっせと手を動かすのみ。
ホワイトアッシュの木目にクロススリットの装飾
中央に配置された講壇と聖餐台。コンクリートの躯体を背に余計な装飾をいれず、ホワイトアッシュの木目とクロススリットだけのシンプルな見た目。聖餐台はクロススリットの板の部分が、プッシュオープンの扉になっていて。中に聖餐の道具をしまう事ができます。講壇は使う方によって台の高さを変えられるようにしています。
教会建築と家具と
教会の設計は建築家の保坂猛さんで、家具は製作側の意見を取り入れてもらいながら、その場でCADで図面を描いていました。とても柔らかな雰囲気を纏い、自分が今まで持っていた建築家像と違う感じがとても新鮮でした。教会の詳細は保坂猛建築都市設計事務所さんのホームページにありますのでご参考までに。
板座のベンチには教会の方々の手作りのクッションが付いています。このクッションがついて完成といったところです。
時々刻々とかわる降り注ぐ自然光によって変化する空間とホワイトアッシュの白木の淡い色合い。コンクリートと木材の素材感。ここに人が集い、集まったぬくもりが安息になりますように。
参考までに教会のベンチとしても使えそうな、また違った雰囲気のベンチです。参考までに。
教会の家具 教壇 聖餐台 ベンチ
- 本体:ホワイトアッシュ
- 塗装:植物性オイルフィニッシュ
- 参考価格:お問い合わせください
- 神奈川県海老名市
お知らせ
家具づくりで余った端材を無駄にせずに利用して、器やお皿を作っています。木の持つ温かみを生活に取り入れてみてください。ネットショップにて販売していますので是非お立ち寄りください。よろしくお願いいたします。
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